日本で唯一の耐火物に関する公的研究機関、耐火物・高温セラミックスの研究を中心、 産学官連携共同研究、測定・分析、施設・機器利用、技術交流、人材育成、情報提供

運営:一般財団法人岡山セラミックス技術振興財団
〒705-0021 岡山県備前市西片上1406-18

研究テーマ

耐火物やセラミックスに関する研究開発及び委託開発を行います。

耐火物などの高温材料に関する研究開発を行っています。主テーマとして新規原料、組織制御技術、複合材料特性、高温反応解析、新規評価技術などの研究開発を推進するとともに、企業や公的機関等からの委託研究にも取り組んでいます。

研究テーマ【2024年度】

自主研究

1 耐火物の熱間機械特性-れんがの弾性率変化とその他諸特性との関係-

れんがの変形のしやすさを示す弾性率は、加熱温度に応じて変動する。これは、れんがの構成鉱物相による転移、液相生成および液相生成による焼結などの組織変化が影響していると思われる。これらのことは、高温弾性率と同時に測定される内部摩擦の結果とこれまでに報告されている知見からの推測であり、確証は得られていない。ここでは、各現象を捉えることに特化した装置(例えば、液相生成は荷重下膨張、転移は粉末X線回折など)を用いて、高温弾性率の測定温度による変化を検討する。
 粘土質れんが、けい石れんが、高温焼成後炭素含有耐火物および不定形耐火物を用いて、高温弾性率、荷重下膨張、クリープ、鉱物相などの諸特性値を測定し、高温弾性率に及ぼす各諸特性の影響や関係性を明らかにする。

2 超高速加熱炉による熱伝導率測定の試み

耐火物は、熱伝導率の低い酸化物以外に、SiCやカーボンといった高い熱伝導率を有する材質も多く存在しているので、広範囲にわたる熱伝導率測定が可能となることが望ましい。そのために、測定に際しては、試料から放散される熱をいかに抑制するかが重要であり、これまでの研究により、断熱効果が熱伝導率の算出値に与える影響が大きいことが分かった。
 断熱方法を試行錯誤し、セラミック材の熱伝導率の理論値に近い値となる方法を見つけ出すことを目的とする。また、高熱伝導率体での測定が可能になった場合、断熱れんが等の低熱伝導率体を測定する。

3 水素キャリアにおける通気率測定装置の開発
 カーボンニュートラルを達成するため、鉄鋼産業においては、水素還元製鉄を掲げており、製鉄に用いられる耐火物においても水素への耐用が必要となっている。また、JFCCの測定では、水素による通気率は上昇する事が示唆されており、耐火物において水素の通気率評価が必要不可欠となっているため、既存の窒素、アルゴンガス対応の通気率装置を改良する事により水素による通気率測定を実現する。
4 パーマれんがの損傷における水素ガスの影響 (新規) (連携先 岡山大学惑星物質研究所)
 Al2O3-SiO2系れんが(SK34)を中心に、水素/一酸化炭素の混合ガス雰囲気下500℃で炭素析出を試みる。実施時の雰囲気は、水素濃度を数水準に振り、水素濃度と亀裂・崩壊を含む炭素析出との関係性を検討する。また、目視による定性的な評価に加え、試験前後の通気率および試験後の割裂試験を実施し、数値比較の定量的な評価まで行う。さらには、必要に応じて微構造観察や鉱物相変化も調査し、パーマれんがの損傷に及ぼす水素ガスの影響を総合的に検討する。
5 非鉄金属とれんがとの濡れ角測定
 非鉄金属の製造に使用されるれんがも製鉄、製鋼と類似した課題が多く存在する。そのため、これまでと同様に超高速加熱炉でデータ取得すれば問題解決できると考えられるが、非鉄金属は、表面酸化膜のために完全溶融が困難である。ここでは、表面酸化膜の除去を行い非鉄金属とれんがとの濡れ角測定を可能にする。非鉄金属としてAl、TiおよびCuを選択し、水素含有雰囲気中で熱処理し、酸化膜の還元を試みる。
 また、試験温度は、非鉄金属の融点付近が好ましいが、確認までに酸化物融点までの加熱も視野に入れる。以上の方法で、非鉄金属の溶融に成功した場合は、Al/Si3N4、Al/Al2O3、Ti/CaO-ZrO2、Cu/MgO-Cr2O3といった非鉄金属/耐火材料の各種組み合わせの濡れ角測定を行う。

受託研究

1 耐火物の熱間機械特性-れんがの弾性率変化とその他諸特性との関係-
                                 助成金研究/耐火物技術協会
 耐火物の使用環境の過酷化(より高温度での使用)が進む中で、最も重要である耐火性の評価項目である耐火度試験においても、高温域での測定要望が増加傾向にある。そこで、耐火度試験用高耐熱炉の整備、専用バーナーの最適化を通じて1880℃(SK39)以上の耐火度測定の実施と(作業者の目視に頼らない)熱画像カメラを用いて、測定中における試料の状態変化を動画記録することで判定することを試みる。
2
高機能耐火材料の研究開発並びに高温特性の新評価技術の確立
(1)高機能耐火材料の研究開発
                         特別電源所在県科学技術振興事業/文部科学省

① 高機能耐火材料の研究開発
1)材料の低コスト化ための炭素源などの検討 (委託先 第一機電(株))
誘導炉は、バッチ式による合成法と比較して少ないエネルギーで合成が可能であることから、Al4SiC4を始めとする複合炭化物の合成に適した手法であると言える。しかし、均質合成を行うには、合成量、出力条件および合成時間といった多くのパラメーターの最適化を行う必要があることから、Al4SiC4の単相合成が得られる条件出しを行い、その条件を基に、Al-B-C系の低コスト化の合成も試みる。
原料を純度の高い黒鉛、Me-Al、Me-Siに、選定装置の出力プログラムの初期値は35kWとそれぞれ固定し、保持時の出力を段階的に低下させる試行錯誤の試験を実施し、最適条件を模索する。単相が得られる条件が決定した場合は、次に、Me-Siをシリコンスラッジ、黒鉛を活性炭集塵紛のリサイクル原料に変更して研究開発を進める。

3 高機能耐火材料の研究開発並びに高温特性の新評価技術の確立
(2)
高温特性に係る新評価技術の確立
                         特別電源所在県科学技術振興事業/文部科学省
 ②高温特性に係る新評価技術の確立
1)新たな耐食性評価技術の検討
ろう石れんがの緻密層におけるCOガス腐食の程度を確認し、ガス透過性を低減することがCOガスによる腐食に効果的であることを明確にする。これを明確にした後、SK34を対象とし、試料内部へ侵入するCOガスを抑制する処理を施す。処理方法としては、①高温焼成による酸化鉄の無害化、②高温焼成による組織の緻密化の2方法を検討する。これらの処理を施したれんがと無処理のれんがとを新設した合成ガス炉システムにてCOガス雰囲気中で熱処理を行う。本実験から得られた結果と前年度までの結果とを比較し、れんがの延命の可否を判断する。
4 企業からの受託研究
 激しさを増す国際競争に即応できる技術開発が企業から求められる中、このニーズに直接応える受託研究は、重要な支援活動と位置付けられる。また、近年、化学、非鉄金属、プラントメーカーなど耐火物産業以外からの受託研究業務も積極的に実施している。
 従来に加えて、今後、財団の新規合成原料を用いた耐火物の機能強化や開発・新設装置などを活用した耐火物の反応評価など他所ではできない研究の受託を模索すると共に、耐火物関連産業が他分野へ進出するために行う共同研究などをより一層、内容を高度化することで顧客満足度を高め、産業振興に貢献していく。

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